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株式会社巻組の渡邊代表をお迎えして、地方と都会との違いをベースに、地方創生の難しい点についてお伺いします。また巻組がどのような形で解決しようとしているのか、移住者や関係人口をどのように増やしているのか、またその成果についてお伺いします。

渡邊享子

株式会社巻組 代表取締役
2011年の東日本大震災をきっかけに宮城県石巻市へ移住。2015年に巻組を設立。資産価値の低い空き家を買い上げ、クリエイターをターゲットとした大家業をスタート。シェアやリユースを切り口に地方の不動産が流動化する仕組みづくりを模索し、全国にRooptブランドで事業を展開中。 https://roopt.jp/

公式サイト: https://makigumi.org/

上田祐司

株式会社ガイアックス 代表執行役
ガイアックスでは、「人と人をつなげる」をミッションに、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミー事業を展開。また起業家が集うスタートアップスタジオという側面も持ち、社会課題を解決するための事業づくりサポート、投資を行う。シェアリングエコノミー協会代表理事。

公式サイト: https://www.gaiax.co.jp/
Twitter: @yujiyuji

上田

今日は地方創生に関して、シェアを活用して、この問題に取り組んでいらっしゃる、巻組さん、渡邊さんに お話を聞きたいと思います。
渡邊さん、こんにちは。

渡邊

はい、こんにちは。
巻組の渡邊です。

上田

渡邊さんは、もともと出身がどちらで、今はどちらにいらっしゃるんですか?

渡邊

もともと出身は埼玉県で、今は宮城県の石巻市、というところを拠点にしております。

上田

今までの育ちも埼玉ですか?

渡邊

親が転勤族だったので、生まれた病院は、大阪の方だったんですけれども、名古屋、大阪、東京を転々として、埼玉県に居を構えたという感じでした。
で、今は宮城県におります。

上田

そういう意味では、比較的、大都市圏にいたということですね。

渡邊

そうですね。
大都市圏にずっといました。

上田

なかなか地方創生とか、地域格差の問題って、大都市圏に住んでいると、イメージつかないところがあるんですけれども、そういう意味では両方を体験されている、渡邊さんはより感じてらっしゃるのかな、と思います。
今日はそのあたりも含めて、お話をうかがいたいなと思います。

地方の課題

渡邊

お願いします。

上田

最初、渡邊さんの考える 地方の課題って、どんなところが大きいと思われますか。

渡邊

地方の課題、私はどちらかと言うと、今もお話ししたように、都市部でずっと育ったので、地方にむしろ憧れ、埼玉県は海も山もないことで有名なので、海が特にないってということで、有名なので、親も埼玉県出身ではなかったですし、あまり地域の良さとか、自分の出身地、地域とか、良さみたいなことを考えたことが、あまりなかったんですけど、そういう意味では、今、宮城の石巻におりまして、自然が豊かで、食べ物が多くて、その地域ならではの文化がある、っていうところに対しては、魅力を感じているので、そんなに課題って思ったことが、実はあんまりないんですが、 一方で、人口が減ってしまうので、その地域で作ったものを、なかなか地域の中で売る、っていうことだけでは成り立たないっていう、そのビジネスチャンスの少なさっていうのは、どうしても全体的にはあるんじゃないかな、という風には思いましたし、そういう中で、若い子達のキャリアイメージが、限られてしまうっていうところが、すごく深刻で、キャリアアップしていくためには、都市部の大学に出て、都市部で就職しないと、なかなか最初は難しい っていうところがありますし、高卒の子達も、製造業とかがメインになってしまうので、そういう意味では、そういうところの課題っていうのは あるのかな、という風に感じています。

上田

確かに地方で育つと、なかなかイメージが付かないですよね。

渡邊

そうですね。
うちの社員とかも、地元の雇用がほとんどなんですけれども、あまり新卒で行きたいような、会社がなかったっていう、ことがほとんどですし、どうしても就職しても、男社会だったりとかするので、特に年齢層の若い女の子が、これ以上、その地域の会社で、キャリアイメージを 積めないみたいなところは、すごく深刻かなと思っていて、一方で、震災後に、10代だった子達が、今、大人になってきてるんですけれども、ボランティアをきっかけに、いろんな移住者さんが入ってきて、自分のキャリアイメージが広がって、大学卒業してすぐフリーランスになる、子たちもいますし、そういうのを見ていると、やっぱり人材の交流というか、流動っていうのは、非常に重要な切り口になるんじゃないかな、という風に感じてました。

上田
キャリアイメージが付かない状態で、そして、なかなか東京から 人もいかないですから、キャリアイメージのついてない人だけが、地方に残って、そうじゃない人は 東京に行っちゃって、帰ってこないという、どうしようもない状態っていえば、そういうことになりますね。

渡邊
そういうことが 戦後ずっと続いてしまったので、今、地方の経済が、課題になってるんじゃないかな っていうことは、ひしひしと感じます。

東京と地方との違い

上田

東京と地方を、行き来されていらっしゃる中で 感じるのは、そこが一番大きいところですか?
他に、ここも違うなとか、思うところはありませんか?

渡邊

そうですね。あとは、公共交通が少ないので、例えば、私が埼玉に住んでる時は、5分とか10分おきに電車が来て、15分ぐらい来ないと、そんなに待つのって感じだったんですけど、ここだと1時間に1本しか 基本ないので、それに合わせて生活する、っていうことがあったので、そういう意味で どっちが良いとか悪いとか、何か課題があるっていうことでは ないんですけれども、生活の感覚というか、必要なスペックっていうところに関しての、感覚はすごく感じましたね。

上田

そこまでお伺いすると、それって普通に考えたら、1時間1本ってすごく不幸せな、環境だとは思うんですが、実際の体感として、どうなんですか?
普通度とか幸せ度とか。

渡邊

そういう意味で言うと、そこまで、人口が多いんで、もちろん分散させないといけないんで、本数が多いっていう問題も あると思うんですけれども、そこまで必要なかったっていうか、1時間に1本でも結構生活できるんだな、って思ったところが、首都圏で育った私としては ありましたね。
みんな電車に合わせて生活する みたいなことをしてまして、高校生が、四時電、五時電、六時電 みたいな、電車に名前を付けて、それに合わせて生活していて、特にそれに疑問を感じてもいない感じなので、こういうふうに時間の使い方って、見方によってだいぶ変わるんだな、と思いましたし、生活の豊かさって、捉えようなんだなっていうことは、気づきとしてはありました。

上田

渡邊さんの周りで、移住されて来られる方も 多いと思うんですけれども、皆さんの反応はどうですか?

渡邊

そうですね。 特にそこに関して、みんな全体的にもっと不便かと、思ってたけれども、意外と住むと心地良い、っていう話はよく聞きますね。

上田

東京の人からすると 地方に行く、渡邊さんみたいに 地方に行くっていうのは、ちょっと信じられない みたいなところがある、普通はあるんですけれども、実際はもしかしたら そこまでじゃない、別に生活の豊かさという観点では、もっと進んでいて、過剰に自分たちが 焦っていたり、忙しい人生を送っている だけなのかもしれない、ってことですよね。

渡邊

そうですね。
おっしゃる通りで、首都圏と行ったり来たりしてるんですけれども、どっちがどう悪いっていうこと ではなくて、東京に住んでいると、不便だなって思うことも やっぱりあって、どこに行っても混んでるし、並ばなきゃいけないし、通勤電車とか大変だなっていうふうに、思ったりしますし、逆に地方で、意外とチャレンジングな お店をやっていたりとか、こだわっているお店をやっていたりとか、される方が多いので、そういうところで お得意様になって、暮らしたりとかしてると、意外と東京で手に入るものって、セレクトショップとかブランド物で、逆に言えば、どこでも手に入ったりするものって、結構あるのかなっていう 印象だったんですけど、地方って、そこのオンリーワンのものがあるので、そういうものでは、そっちにカスタマイズして生活する、っていうのは、人によっては、すごく楽しいことではないかな、という風に感じてます。

上田

なるほどですね。
確かに東京で手に入るものは、どこでも手に入るのかもしれないですよね。

渡邊

そうですよね。
もちろん人が集まるんで、文化の多様性っていうのは、東京ではあると思うんですけど、地方で文化って、ニッチではあるんですけど、その土地ならではっていうものが、狭くもあるけど、その土地ならでは、っていうところはあるん じゃないかなと思います。

巻組が取り組んでいること

上田

そんな中、巻組さんが、地方創生に資することで、取り組んでいらっしゃることについて、ご説明いただければなと 思うんですが。

渡邊

そうですね。
空き家の活用を通して、関係人口というか、地方に関わる方を、創出するっていうところが、特に大事なことかな、というふうに思ってまして、空き家に滞在することをきっかけに、地域に継続的に関わったりだとか、何なら移住する方を増やしていく、っていうことが、地方創生っていう文脈においては、うちの役割かなというふうに、思っています。

上田

実際、その移住者は、巻組さんのサービスでできている、という感じですか。

渡邊

そうですね。
実際、今はまだ、10軒から15軒ぐらいしかないので、空いてるところで 10軒ぐらいなんですけれども、実際に住まれてる方っていうのは、20人前後ぐらいなんですけれども、これまでも入れ替わり立ち替わり、色んな方が、100名程が、使ってくれてまして、うちの空き家に、1年とか半年とか滞在して、その後に、自分で家を借りられて、住まれている方っていうのも たくさんいらっしゃいますし、そこで結婚されたみたいな方も、いらっしゃいますし、あとは、実際自分で事業を立ち上げられて、頑張ってる方もいらっしゃるので、そういう意味では、地域に対して貢献できてるんじゃないかな、という風に思っております。

上田

もう一度、取り組みについて、お伺いしたいんですが、されていらっしゃるのは、そういう意味では シェアハウスですよね。

渡邊

そうですね。
資産価値の低い空き家を買い上げて、リノベーションして、シェアハウスだとか、ゲストハウスだったり とかにしていく、っていうことを、軸にしております。

上田

普通、シェアハウスだと、地域の方が普通に家を探して、普通に住まれるだけのことが、普通だと思うんですけれども、巻組さんは、積極的に東京から、移住をすることに、資することをされてらっしゃる。
それはゲストハウスも やってらっしゃるからですかね。

渡邊

ゲストハウスをやってる、民泊で、宿泊施設も、運営しているのと、合わせて、うちのシェアハウスって、短期でも契約させていただいていて、3ヶ月とか半年とかで使われる方も、積極的に受け入れています。
例えば、地域おこし協力隊とかで、移住したいみたいな方が いらっしゃった時に、すぐに行かなきゃ いけないんだけれども、家を探す余裕がない、みたいな方がいらっしゃった時に、とりあえず、うちのところに住んで、家を探しますかっていうような方が、結構いらっしゃったりとか、っていうことはありますね。
あとシェアハウスなので、家具付きなので、トランク1つで来られるっていう方が、結構いらっしゃってですね、とりあえず気軽に、巻組のシェアハウスに住んで、そこから家を探すみたいな、そんなような使い方を していただいているので、そういう入り口になれるっていう点では、うちの役割っていうのはあるんじゃないかな、と感じています。

上田

そういうところが違うので、普通に地域の人が、普通にシェアハウスとして使うのではなく。

渡邊

もちろん地域の方でも、例えば、セカンドハウス的に、実家に住んでるんだけども、年も年だから居づらいみたいな方も、使ってくださってますし、リーズナブルなので、うちの方は制作をやったりとか、仕事をする拠点として、使いたいみたいな方も 結構いらっしゃいます。

上田

リーズナブル。 実際いくらぐらいの金額ですか。

渡邊

3万円から5万円の間くらいで、光熱費込みっていうところで。

上田

2拠点居住として、使われる方もあり得る金額帯ですよね。

渡邊

うちは、首都圏の方の神楽坂にも、1個拠点があるんですけれども、神楽坂も石巻もどっちも借りてる、みたいな方もいらっしゃいますね。

上田

実際、東京の方と地方の方が、出会うことで生まれるものとかって、あったりするものですか。

渡邊

すごくあると思いますね。
地方だと、ものづくりをされる方とか、アートをされる方って、結構いらっしゃるんですけれども、例えば、アクセサリとか、クラフトグッズを作って、地域で売ろうとしても、オフラインというか、直接いらっしゃって、買われる方の数って限られてますし、なかなか単価が上がらなかったり ってことは、結構あるんですけれども、そういうものも東京の方が、東京の方って言ったら、なんかちょっとあれですけど、都市部の方がいらっしゃって、すごく安いっていう感じなんですよね。
高単価の商品の見方を、分かってる方がいらっしゃると、じゃ、これ東京で売りましょう、っていう話があったりとか、リピートしていっぱい買ってくださったり、っていうこともありますし、もっとこうしたら使いやすい みたいな話もですね、首都圏から来られる方が、色々アドバイスくださって、少しずつ作品が、ブラッシュアップされていったり、っていうところも見てまして、そういう形で、消費地と個人的につながっていく っていうことっていうか、もうちょっと顔の見える形で、消費地と地方が繋がっていくって、結構重要なことなんだろうなっていうのは、すごく見ていて思います。

上田

それは、やっぱり、シェアハウスですとか、シェアオフィスみたいな、完結型の家を提供しているわけでもなく、完結型のオフィスを提供しているわけではなく、シェアで人が混ざるからこそ、出てくるものですよね。

渡邊

出入り自由だったりとか、対応だったりとか っていうところが、重要かなと思っていて、地方の人口の少ない所にいると、色んなアイデアをもらっていても、そんな売れる訳ないとか、同調圧力で潰れていってしまう、っていうことは結構あるんですけど、やっぱりそういう、アート作品とか作ってみたいとか、こけし作ってみたいとか、鹿革の犬の首輪みたいなものを、作ってみたいみたいな 色々あると思うんですけど、そういう突飛なアイデアは、同調圧力で潰されがちなんですけれども、その価値は多様な方が出入りしてくれると、数人に一人は、価値を見出してくださる方とか、別の地域だと、それすごく面白いって 言っていただいたり、っていうことが 結構あるので、そういう人材交流とかシェアとか、今はもう、世界中の方と、繋がれる時代だと思うので、リアルに人が行き来したりとか、その後も繋がり続けるみたいなことって、すごく重要だなという風に感じています。

上田

地方の非常に難しい部分、キャリアパスを見いだせず、刺激もなく、工場で働くだけで、購買力もどんどん下がっていく っていうような、全般的に沈んでいくところを、巻組さんの方で、移住者を作ったり、交流される方を作ったりということで、どんどん活気も作ってるし、新しいビジネスを作っていくこともある、という感じですね。
本当にこれは、渡邊さんが東京から来て、埼玉ですけれども、関東からですね、地方で働いてらっしゃるということと、あとは元々渡邊さんも、建築屋さんというより、街づくりに興味があられる、そのことをよく考えられてらっしゃる、っていうところもあるのかなと感じてます。
その部分はあるんですかね。

渡邊

私自身が設計をするわけでは ないんですけれども、都市計画で建築の畑にはいて、みたいなところではあるんですけど、どうしても建築ばかり見てしまうと、設計者の方、建築設計やられる方も本当に多様で、広がってきているので、色んな方がいらっしゃると思うんですけれども、どうしても設計セオリーだと、建築として良いものをどう作るか っていう話に、どうしても最終的に落ちがちなので、うちの会社って、そこに深入りするというよりは、その先に、どう運営していくか っていうことだったりとか、どんな方に住んでいただけるのか っていうところに、力を入れているので、っていうか視点があるので、そういうところは大事なんじゃないかな、っていう風に思っておりますし、震災後に、色んな方と関わっていく中で、街が変わっていく様子っていうのを、ずっと見続けてきた中で、たまってきた知見っていうのは、すごく大きいんじゃないかな、という風に感じています。

上田

なるほど。 分かりました。
色々とお話いただきまして ありがとうございました。
ぜひ皆さんも巻組のサービスを使って、地方を楽しんでもらって、交流なんかもしてもらえたらいいな、という風に思います。
本日はどうもありがとうございました。

渡邊

ありがとうございました。

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